竹 取 物語 現代 語 訳。 竹取物語[かぐや姫]・六・『竜の頸の珠‐大納言大伴御行』(原文・現代語訳)

竹取物語(かぐや姫)のあらすじをできるだけ原文に添って|終活ねっと

竹 取 物語 現代 語 訳

まず本の紹介をしなくてはならない。 つい最近、川端康成の新刊「現代語訳竹取物語」が、新潮文庫より 刊行された。 この時期に川端の新刊? と一瞬私は頭を傾げたが、何の躊躇いもなくすぐさま購入した。 「現代語訳竹取物語」(川端康成全集第35巻所収)と、「「竹取物語」解説」(同全集第32巻)の2篇 からなるそれは、「物語の出で来しはじめの祖」(「源氏物語」絵合巻)とうたわれる我が国最古 の物語を、ノーベル賞作家である川端康成が持ち前の美しい文章によって現代語訳した、という点に何より 意味があり、また日本を代表する近代文学作家が物語の原点を解説する、という点にこの本の妙味がある。 簡潔で歯切れのよい川端文学の持ち味がここにおいてもよくあらわれており、これから古典を学ぼうとしている 人にとっては絶好の一冊ではないかと思う。 今考えてみれば、川端の文章は明らかに古典に通ずるものがあり、それは簡単にいってしまえば<日本的情感の文学>なのであって、 古典の現代語訳をやっていて当然といえば当然なのである。 この本はそうした期待を裏切らない出来映えとなっており、読後が本当に快いものであったというのが私の率直な感想である。 私がこの本で特に注目したいのは川端の解説の方である。 解説というだけあって、諸研究者の論をいくつか引き出しながら「竹取物語」を分析しているのだが、やはり作家だからであろうか、 決して衒学的になることなく、非常に明解に、小説家としての<読み方>を論じられている。 たとえば、 「竹取物語は、小説として、発端、事件、葛藤、結末の四つがちゃんとそろっている。 そしてその結構にゆるみがないこと、描写がなかなか 溌剌としていて面白いこと、ユーモアもあり悲哀もあって、また勇壮なところもあり、結末の富士の煙が今も尚昇っているというところなど、一種象徴的な 美しさと永遠さと悲哀があっていい。 しかし何よりもいいのはやはりその文章である。 簡潔で、要領を得ていて力強く、しかもその中に自然といろいろの味が 含まっているところ、われわれはどうしても現代文でその要領のよさを狙うことは出来ない。 しかしその中にちゃんと調子(トーン)があって、強まるべきところは強まり、抑えられるべき ところは抑えられてあって、この作者がなかなか芸術家であることが感じられる。 」(二) という箇所。 これは明らかに<小説家>としての視点で作品を捉えているのであり、批評家としてのそれではない。 これは「解説」全般にいえることだが、川端は「竹取物語」の作者の技巧に特に注目している。 恐らく、同じ作家として竹取の作者を特に注目してしまうのだろうが、それにしてもこのような見方は非常に興味深いものがある。 「(略)作者は非常に簡潔な筆で、なんでもないことのように、当然のことのように書き進んでいるが、そこのところの叙述は見事である。 この超自然な不自然なことを、作者は何の疑いもなく平気で堂々と平静にかいている。 それは凡らく古代人の太い神経のお蔭であろう。 また、古代文の現代文の及ばない簡潔さであろう。 けれどもそこに、作者の腕も見える。 だれもここを読んで、なんだ馬鹿にしているとか、ははァこれは童話かなどという気が 起こらぬばかりか、つづいて次を読む気になる。 それは何も古代人ばかりがそうだっただろうというのではなく、近代人をも充分に説得するだけの力を持っているのである。 極端に云えば、この発端を読んだだけでも、この作者の腕は わかると云える位である。 」(二) ここの箇所を見ても、川端が「竹取物語」の作者の才能に感心していることがおわかりになるであろう。 私はどうしても川端を贔屓目で見てしまうが、しかしこうした記述はやはり説得力がある。 先に述べたとおり、川端はこの作者の腕に 注目しているが、それに加えて古代文の利点をも注目しており、常に古代文と現代文、古典文学と近代文学とを念頭に置いたうえで作品を見ているのである。 けれども、まだそのごく最初なので、作者は筆を惜しんで、 軽く序の口の程度に止めている。 即ち読者は、ここに作者の筆の調子(トーン)を見るべきである。 最初の発端は、平静に、次の発展部は壮大に、そして今この章は、そのあとを受けて軽く止めたのである。 即ち調子で云えば、弱、強、弱である。 」(三) 「解説」の中心は、作品のそれぞれの段落の梗概をあげて、上に引用したような、調子や作者の技巧を述べるといった形になっている。 川端は常に作者を意識し、あたかも同時代作家の作品批評をするかのように、 その文章的技巧をあげている。 さてこうしてこの本は成り立っているのだが、この場であまり詳しく私の感想を書いてしまうと読む楽しみが無くなってしまいそうなので、この辺にしておくことにして、最後にこの本を通じて感じた川端康成について書いておこうと思う。 このような解説の中に、私は川端康成の繊細な眼差しと、作家としての存在の偉大さを見出さずにはいられない。 これを読んだ上で川端の作品を思い出してみると、明らかに古典に通じたその面影というものがうかがえるのである。 それは何といっても文章の簡潔さにあるであろう。 本人もいっているとおり、簡潔さという点では「竹取物語」をはじめ古代文にはとうてい及ばないであろうが、しかし近代文学作家の中では特に抜きん出た存在ではないかと思う。 そこに川端の日本の伝統美があるのであり、 世界に認められる素質があるのだと私は思うのである。

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竹取物語『蓬莱の玉の枝』 わかりやすい現代語訳・解説 その3 / 古文 by 走るメロス

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かぐや姫に、「はや、かの御使ひに対面したまへ」と言へば、かぐや姫、「よきかたちにもあらず。 いかでか見ゆべき」と言へば、「うたてものたまふかな。 帝の御使ひをばいかでおろかにせむ」と言へば、かぐや姫答ふるやう、「帝の召してのたまはむこと、かしこしとも思はず」と言ひて、さらに見ゆべくもあらず。 生める子のやうにあれど、いと心恥づかしげに、おろそかなるやうに言ひければ、心のままにもえ責めず。 女、内侍のもとに帰りいでて、「口惜しく、この幼き者は、こはくはべる者にて、対面すまじき」と申す。 内侍、「必ず見奉りてまゐれ、と仰せごとありつるものを、見奉らでは、いかでか帰りまゐらむ。 国王の仰せごとを、まさに世に住みたまはむ人の、承りたまはでありなむや。 いはれぬことなしたまひそ」と、ことば恥づかしく言ひければ、これを聞きて、まして、かぐや姫、聞くべくもあらず。 「国王の仰せごとをそむかば、はや殺したまひてよかし」と言ふ。 かぐや姫に、「すぐに、あの御使者に対面なされよ」と言うと、かぐや姫、「よい器量でもありませぬ。 どうしてお目にかかれましょうか」と言ったので、「情けないことをおっしゃる。 帝の御使いを、どれほどおろそかになさるのか」と言うと、かぐや姫が答えるには、「たとえ帝がお召しになって仰られたとしても、恐れ多いとも思いません」と言って、いっこうに姿を見せようとしない。 いつもは生んだ子のようなのに、このたびはこちらがとても気後れするような気配で、つっけんどんに言うので、お婆さんは思い通りに責めたてることができない。 お婆さんは内侍のもとに戻ってきて、「残念ながら、この幼い娘はものの判断もつかない者ですので、対面しますまい」と申し上げた。 内侍は、「必ずお会いして参れとの仰せでしたのに、お会いせずにどうして帰れましょうよ。 国王の御命令を、この世に住んでおられる人がどうしてお受けせずにいられましょうか。 道理に合わないことをなさいますな」と、お婆さんが恥じるほどの言葉遣いで言ったので、これを聞いたかぐや姫はなおさら承知するはずもない。 「国王の御命令に背いたというならば、早く殺してしまわれよ」と言った。

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「竹取物語」に類似の中国文学とは?

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大臣阿倍御主人は、豊かで家が広い人だった。 渡来人の王卿に依頼して火鼠の注文をした。 使い(パシリ)に小野房盛をつかわし、金を渡した。 王卿いわく、わが国の物ではなく、聞いたことはあるが見たことはない。 この世にあるならわが国にも渡って来るだろうが、難しい商いだ。 もし天地の国で、あまねくみち渡るものならば、年(値・ね)を問わずに求めよう。 しかし、この世にないなら、使いに添えて金は返そう。 そして彼の船が来た。 房盛が筑紫からたってたった7日で(しかもタダで・碌に禄を与えずに)文を持って返って来た。 その文にはこうあった。 「火鼠、かろうじて買い取った。 今(こ)の世になくともあの世にあった。 ただ、金が少し足らず。 50両。 なければ質に返す」と。 その返事。 「何をおっしゃるのでしょう。 少しの金のこと必ず送りましょう、嬉しいものです」と。 唐土の方に向かい頭をたれてハエのように拝んでいる。 見ればその色は瑠璃のような紺青。 今生の色。 かぐや姫が欲しがるはずだ、といってしたり顔。 早くもヤる気満々で化粧し、泊まり支度をする。 「私の限りない思いの証、焼けぬかわごろもです。 私の袖の下もかわくほどでした。 今日こそキメにいきます」とキモい歌も準備しておく。 焼けぬというか、いかにヤれるかしか考えていない。 金に物言わせ恥も知らず、むしろ誇る。 哀れなり成金。 自分の言葉で何が言えるんかな。 恥知らず家の門前にやって来たので、竹取取ってきて姫に見せた。 「売ってるようなうるわしい皮だこと。 しかしまことのかわかわわからない」 竹取「いやいや、この世でない見た目から、まことと思ってよ。 人にこんなに旅させといて」と勝手に「今回は必ず会います」と口約束する。 この翁(じい・地位竹男)は、姫がやもめということを嘆くが、本人が断じてやともめるから断るしかない。 無理強いできない、それが理なり。 かぐや姫「この皮衣を焼いてみて焼けなければ負けてやろう。 この世のものでない、それを疑うなというのだから、そのように見せてみよ」 翁はそう言われたと言って伝えた。 大臣「これは唐土にもなく、辛うじて求めて得たもの、何で疑うのか、そういうなら早く焼いてみよ」と。 火中に入れたらメラメラ焼けた。 だから異物(こともの)の皮、子どもの皮かむりとかかり臭い。 草葉顔でクソバカ男。 ヤけにクサいな。 かぐや姫は「あら嬉しい」と歌を返す。 「何の名残もないゆとり。 ばかさも思いのほか。 自分の思いの外があること、身を置いてみて見なさい」 当然彼は去った(さっと帰った)。 世間の人々、安倍大臣はかぐや姫のウチにいるかと問い、ある人、イチモツが焼けたので入れれなかったと。 これをもって目的(ヤリ目)を達成できないものを、あえない(会えないし愛し合えない)、敢え無し(しょうもな、アホでない?)と言った。 竹取物語 國民文庫 竹とりの翁物語 群書類從 右大臣阿倍御主人は 〔389〕 左大臣安倍のみむらじは。 財(たから)豐に 家廣き人にぞおはしける。 〔390〕 寶ゆたかに 家廣き人にぞおはしける。 その年わたりける唐土船の 王卿(わうけい) といふものゝ許に、文を書きて、 〔391〕 其年きたりけるもろこし船の わうけい といふ人のもとに文を書て。 「火鼠の裘といふなるもの 買ひておこせよ。 」とて、 〔392〕 火ねづみの皮といふなる物 買ておこせよとて。 仕うまつる人の中に 心たしかなるを選びて、 〔393〕 つかふまつる人の中に 心たしかなるを撰て。 小野房守 といふ人をつけてつかはす。 〔394〕 小野房盛 と云人をつけてつかはす。 もていたりて、かの浦に居をる 王卿に金をとらす。 〔395〕 もていたりてかのうらにをる わうけいに金をとらす。 王卿 文をひろげて見て、返事かく。 〔396〕 わうけい 文をひろげて見て返事かく。 「火鼠の裘 〔397〕 火鼠の皮衣。 我國になきものなり。 〔398〕 此國になき物也。 おとには聞けども 〔399〕 音にはきけども。 いまだ見ぬものなり。 〔400〕 いまだ見ずさぶらふ物也。 世にあるものならば、 〔401〕 世にある物ならば。 この國にももてまうで來なまし。 〔402〕 此國にももて詣來なまし。 いと難きあきなひなり。 〔403〕 いとかたき商也。 しかれども もし天竺にたまさかに もて渡りなば、 〔404〕 然ども 若天ぢくに逅に もて渡りなば。 もし長者のあたりに とぶらひ求めんに、 〔405〕 若ちやうじやのあたりに とぶらひもとめんに。 なきものならば、 〔406〕 なき物ならば。 使に添へて金返し奉らん。 」 といへり。 〔407〕 使に添てかねをば返し奉らん といへり。 かの唐土船來けり。 〔408〕 彼唐ぶねきけり。 小野房守まうで來て 〔409〕 小野房盛詣きて。 まうのぼるといふことを聞きて、 〔410〕 まうのぼると云事を聞て。 あゆみとうする馬 をもちて 〔411〕 あゆみとく(うイ)するむま をもちて。 走らせ迎へさせ給ふ 〔412〕 はしらせむかへさせ給ふ。 時に、馬に乘りて、 〔413〕 時に馬に乘て。 筑紫よりたゞ七日(なぬか)に 上りまうできたり。 〔414〕 筑紫より唯七日に のぼりまふで來り。 文を見るに 〔415〕 文をみるに。 いはく、 〔416〕 いはく。 「火鼠の裘 〔417〕 火ねずみの革衣。 辛うじて、 人を出して求めて奉る。 〔418〕 からうじて 人を出して取て奉る。 今の世にも昔の世にも、 〔419〕 今のよにも昔の世にも。 この皮は 容易(たやす)くなきもの なりけり。 〔420〕 此皮は たはやすくなき物 也けり。 昔かしこき天竺のひじり、 〔421〕 昔賢き天竺の聖。 この國にもて渡りて侍りける、 〔422〕 此國にもてわたりて侍りける。 西の山寺にありと聞き及びて、 公に申して、 〔423〕 西の山寺にありと聞及て おほやけに申て。 辛うじて買ひとりて奉る。 〔424〕 からうじてかい取て奉る。 價の金少しと、 〔425〕 あたひの金すくなしと。 國司使に申しゝかば、 〔426〕 こくし使に申しかば。 王卿が物加へて買ひたり。 〔427〕 わうけいが物くはへてかひたり。 今金五十兩たまはるべし。 〔428〕 今金五十兩たまはらん。 船の歸らんにつけてたび送れ。 〔429〕 舟のかへらんにつけてたび送れ。 もし金賜はぬものならば、 〔430〕 若金たまはぬ物ならば。 裘の質かへしたべ。 」 〔431〕 皮衣のしち返したベ。 といへることを見て、 〔432〕 といへる事をみて。 「何おほす。 〔433〕 なにおぼす。 今金少しのこと にこそあンなれ。 〔434〕 いま金少の事 に[にてイ]こそあ[なイ]めれ。 必ず送るべき物 にこそあンなれ。 〔435〕 〔かならず送るベき物 にこそあなれ。 〕 嬉しくして おこせたるかな。 」とて、 〔436〕 うれしくして をこせたる哉とて。 唐土の方に向ひて 伏し拜み給ふ。 〔437〕 唐のかたにむかひて ふし拜み給ふ。 この裘入れたる箱を見れば、 〔438〕 此革衣入たる箱をみれば。 種々のうるはしき瑠璃を いろへて作れり。 〔439〕 草々のうるはしきるりを 色へてつくれり。 裘を見れば 紺青(こんじやう)の色なり。 〔440〕 皮衣を見れば こんじやうの色也。 毛の末には 金の光 輝きたり。 〔441〕 毛のすゑには こがねの光し さゝり(きイ、やきイ)たり。 げに寳と見え、 うるはしきこと 比ぶべきものなし。 〔442〕 寶とみえ うるはしき事 幷ぶべきものなし。 火に燒けぬことよりも、 〔443〕 火に燒ぬ事よりも。 清(けう)らなること ならびなし。 〔444〕 けうらなる事 双なし。 「むべかぐや姫の このもしがり給ふ にこそありけれ。 」 との給ひて、 〔445〕 うベかぐや姫 このもしがり給ふ にこそありけれ との給ひて。 「あなかしこ。 」とて、 〔446〕 あなかしことて。 箱に入れ給ひて、 物の枝につけて、 〔447〕 箱に入たまひて ものの枝に付て。 御身の假粧(けさう) いといたくして、 〔448〕 御身のけさう(化粧) いといたくして。 やがてとまりなんものぞ とおぼして、 〔449〕 やがてとまりなむ物ぞ とおぼして。 歌よみ加へて 持ちていましたり。 〔450〕 歌讀くはへて もちていましたり。 その歌は、 〔451〕 其歌は。 家の門かどにもて至りて立てり。 〔454〕 家の門にもていたりてたてり。 竹取いで來て 〔455〕 竹取出きて。 とり入れて、かぐや姫に見す。 〔456〕 取入てかぐや姫に見す。 かぐや姫 〔457〕 かぐや姫の。 かの裘を見ていはく、 〔458〕 皮衣をみて云く。 「うるはしき皮なンめり。 〔459〕 うるはしき皮・[きぬイ]なめり。 わきてまことの皮ならん とも知らず。 」 〔460〕 わきて誠の皮ならん ともしらず。 竹取答へていはく、 〔461〕 竹とりこたへていはく。 「とまれかくまれ 〔462〕 とまれかくまれ。 まづ請じ入れ奉らん。 〔463〕 先しやうじ入奉らん。 世の中に見えぬ裘のさまなれば、 〔464〕 世中にみえぬ皮衣のさまなれば。 是をまことゝ思ひ給ひね。 〔465〕 これを・[まこと]と思ひ給ね。 人ないたく わびさせ給ひそ。 」 といひて、 〔466〕 人ないたく 佗させ・[奉らせ]たまひそ と云て。 呼びすゑたてまつれり。 〔467〕 よびすへ泰れり。 かく呼びすゑて、 〔468〕 かくよびすへて。 「この度は必ずあはん。 」と、 嫗の心にも思ひをり。 〔469〕 此たび必あはんと 女の心にも思ひをり。 この翁は、 かぐや姫の やもめなるを歎かしければ、 〔470〕 翁は かぐや姫の やもめなるをなげかしければ。 「よき人にあはせん。 」 と思ひはかれども、 〔471〕 よき人にあはせむ と思ひはかれど。 切に「否。 」といふことなれば、 〔472〕 せちにいなといふ事なれば。 えしひぬはことわりなり。 〔473〕 えしゐぬはことはりなり。 かぐや姫翁にいはく、 〔474〕 かぐや姫翁にいはく。 「この裘は火に燒かんに、 〔475〕 此皮ぎぬは火にやかんに。 燒けずはこそ實ならめ と思ひて、 〔476〕 燒ずばこそまことならめ と思ひて。 人のいふことにもまけめ。 〔477〕 人の云事にもまけめ。 『世になきものなれば、 〔478〕 世になき物なれば。 それを實と 疑なく思はん。 』 との給ひて、 〔479〕 それをまことと うたがひなく思はん との給ひて。 なほこれを燒きて見ん。 」 といふ。 〔480〕 猶是をやきてこゝろみむ といふ。 翁「それさもいはれたり。 」 といひて、 〔481〕 おきなそれさもいはれたり といひて。 大臣(おとゞ)に 「かくなん申す。 」といふ。 〔482〕 大臣に かくなん申と云。 大臣答へていはく、 〔483〕 大臣こたへていはく。 「この皮は 唐土にもなかりけるを、 〔484〕 此革は 唐にもなかりし[けるイ]と[をイ]。 辛うじて求め尋ね得たるなり。 〔485〕 からうじて取尋[求イ]えたる也。 何なにの疑かあらん。 〔486〕 何の疑あらん。 さは申すとも、 〔487〕 左は申とも。 はや燒きて見給へ。 」 といへば、 〔488〕 はや燒て見給へ といへば。 火の中にうちくべて 燒かせ給ふに、 〔489〕 火のうちに打くベて やかせ給ふに。 めら\/と燒けぬ。 〔490〕 めら〳〵とやけぬ。 「さればこそ 異物の皮なりけり。 」といふ。 〔491〕 さればこそ こともの皮也けりといふ。 大臣これを見給ひて、 〔492〕 大臣是を見給ひて。 御顔は草の葉の色して 居給へり。 〔493〕 ・[御イ]かほは草の葉の色して ゐたまへり。 かぐや姫は 「あなうれし。 」と喜びて居たり。 〔494〕 かぐや姫は あなうれしとよろこびていたり。 かのよみ給へる歌のかへし、 〔495〕 かのよみ給ひけるうたの返し。 箱に入れてかへす。 〔496〕 箱に入てかへす。 〔498〕 とぞ有ける。 されば歸りいましにけり。 〔499〕 されば歸りいましにけり。 世の人々、 〔500〕 よの人々。 「安倍大臣は 火鼠の裘をもていまして、 〔501〕 あべの大臣 火鼠の皮ぎぬもていまして。 かぐや姫にすみ給ふとな。 〔502〕 かぐや姫にすみ給ふとな。 こゝにやいます。 」など問ふ。 〔503〕 こゝにやいますなどとふ。 或人のいはく、 〔504〕 ある人のいはく。 「裘は火にくべて 燒きたりしかば、 〔505〕 皮は火にくべて やきたりしかば。 めら\/と燒けにしかば、 〔506〕 めら〳〵とやけにしかば。 かぐや姫逢ひ給はず。 」 といひければ、 〔507〕 かぐや姫逢給ず と云ければ。 これを聞きてぞ、 〔508〕 是を聞てぞ。 とげなきものをば あへなしとはいひける。 〔509〕 とげなき物をば あへなしと・(はイ)云ける。

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